無限メタモルフォーゼ
小さな世界で引き継がれる
いのちのドラマ
ハローあなたは誰?
わたしは地球。地球の一部
地球上のルールでは、物質は循環する
すべての生命活動において物質は循環し
物質の循環にともなって、生命ははぐくまれる
つまり、いのちも循環している
そして、わたしの身体を構成する物質は、
たくさんの生命をめぐりめぐって
今、わたしの身体の一部となっている
そう考えると、わたしの身体は
すべて地球からの借り物
自分という存在が、
大いなる地球の営みのさなかにあり
自分の身体はすべて地球からの
借り物であると気づいたとき
わたしたちは自分の存在の前後に、
たくさんの生命を思い浮かべることができる
そして、地球という存在そのものの
偉大さに気がつくことができる
Mikiko Kamada
展示内容
“無限メタモルフォーゼ”は、地球上の生命(いのち)同士のつながりや物質循環のプロセスを表現した展示です。 美しい花が朽ちていくその瞬間とそのプロセスを目の当たりにすることで、いのちが受け継がれていく営みの一端を感じることができます。
本展示の目的は、循環の仕組みを情報として理解するのではなく、身体感覚を通じてそれを「感じる」ことで、自分自身の中に取り込むことです。そのため、デジタル技術に頼りきることはせず、生の生命そのものを展示することで、いのちの持つ本来の姿を改めて体感してもらうことを目指しています。
この地球上で生命と物質の循環は切っても切れない関係にあり、私たち一人一人の存在も、その絶妙なバランスの中に組み込まれています。たとえば花は微生物の生命活動によって分解され、土に還ることで、新しい生命が育まれていきます。その無限に続く変容(メタモルフォーゼ)のありようを通して、生命の尊さと循環のプロセスを体感し、人間も自然の一部であることを実感してもらえれば幸いです。

一つ目の空間、
エクスペリエンス空間
ガラス製の甕の中で花が微生物によって分解され、新しいいのちへと受け継がれていく様子を展示しています。4つのガラス甕(フラワーコンポスト)を通して、鑑賞者はこのプロセスを直感的に体感し、いのちの循環に直接触れることができます。

二つ目の空間、
ダイジェスト空間
最初の空間で体感したいのちの引き継ぎの詳細な過程をタイムラプス映像で鑑賞します。この映像は、花が分解されていくプロセスを視覚的に捉えることで、鑑賞者がその循環を自分ごととして深く受け止められるようになっています。






バックストーリー
微生物の働きによって作られた展示パネル


本展示では、展示台を覆うパネルにも微生物の働きによって作り出された素材を使用しています。
展示台を構成する素材として、私たちはキノコの本体である菌糸に注目しました。菌糸をもとにつくられた素材は防音性や耐熱性、自在な形にできる成形性に優れ、しかも軽量であることから、現在新しい建築素材としても注目されています。
制作過程としては、まず、凹凸のあるパネルの土台に、食用キノコでもあるヒラタケ菌糸が付着したおがくずとデンプン質を混ぜたものを培地として塗り込みます。その後、これを高温多湿の環境で数週間置くことで、ヒラタケがおがくずの中で菌糸を張り巡らせながら成長します。全体が菌糸で埋め尽くされる頃には、培地は一つの塊となり、表面には一体化した菌糸層が形成されます。この状態から一気に乾燥させることで、安定した素材としての「菌糸パネル」が完成しました。
菌糸が培地の中で無数に成長しながら、おがくずを一体化させていくプロセスは、展示のテーマにふさわしいものでした。微生物の力によって形作られたこのパネルもまた生命と循環を象徴しています。
特別協力:鳥居巧(慶應義塾大学大学院)
長い準備期間と数ヶ月に及ぶ撮影

本展示は半屋外であること、また展示が長期間に渡るため、環境の影響を受けやすい微生物が作り上げる作品を展示するために、長い準備期間を要しました。さまざまな光量や光周期、温度で微生物を培養して分解速度を比較するなど、実験を繰り返しました。
また、映像の撮影では、各段階(4相)の象徴的な瞬間を捉えるため、さまざまな種類のフラワーコンポストを制作し、特殊な撮影環境で半年間にわたりタイムラプス撮影を行いました。
この撮影では、通常の時間の流れでは見えない微生物の働きとその影響を追い続けました。その結果、微生物が生み出す変化と美しさを映像として収めた、印象的なタイムラプス映像が完成しました。
- 所要時間:約5分
- 予約は不要です