宇宙の窓

足元の森

太古の森を支える、足元の小さな苔の森

火山活動による荒々しい溶岩大地の上に針葉樹の原生林が広がる北八ヶ岳、白駒の池。
その足元を覆い尽くすのは一面の苔の緑。
悠久の時を刻んできた原生林と足元の小さな苔の森が織りなすいのちの循環の物語。

展示内容

北八ヶ岳・白駒の池の周囲には樹齢数百年にもなる針葉樹の原生林が広がっています。その足元を覆い尽くすのは一面の緑の苔。周辺には500種類以上もの苔が生息し、日本蘚苔類学会から「日本の貴重なコケの森」に認定されています。

白駒の池から湧き立つ霧が苔を潤し、その苔が水を蓄え、微生物や菌類の豊かな生態系を支え、古代からの森を守る。足元で繰り広げられる「ミクロな命の循環」が、時間と空間を超えた壮大なドラマを描き出します。

セイタカスギゴケ

高さ8~20センチ、日本最大のスギゴケが水を蓄える。

イワダレゴケ

名前のとおり、岩や木の根元から垂れ下がるように生える。

ミヤマスナゴケ

日当たりのよい岩の上に生育し、水を含むと一瞬で葉が開く。

ムツデチョウチンゴケ

花のように見えるのは、雄花盤(ゆうかばん)と呼ばれる生殖器官。

イボカタウロコゴケ

岩や倒木の上にはりつくように生える。並んだ葉の模様が特徴的。

ヒカリゴケ

岩の隙間などの暗がりで、太陽光を反射してエメラルドグリーンに光る。

タマゴケ

蒴(さく)と呼ばれる丸い部分から胞子を放出して、命をつなぐ。

コアミメミゾゴケ

成熟すると茶色い胞子体が分裂し、胞子を放出する。

ホコリタケ

コケを拠り所にして生えるキノコ。風に吹かれたり、松ぼっくりなどが当たると頂部の穴から胞子を放出する。

エノキタケ

茶色のぬめりのある傘が密集して生える。

ベニテングタケ

鮮やかな赤色に白い斑点が目を引く毒キノコ。コケが蓄える水分を拠り所にする。

コメツガの幼木

コケの大地に根を張り、逞しく成長する幼木。

バックストーリー

1年にわたる長い撮影期間

この映像の撮影には約1年がかけられました。コケがもっとも美しく見える季節、気候、気温などベストのタイミングを探りながらの撮影には非常に時間がかかりました。また、コケの成長は植物の中でも特に遅く、その成長を映像に捉えるためには長い期間撮影を続ける必要があります。そのためタイムラプス撮影にも多くの手間と時間がかけられています。

北八ヶ岳・白駒の池の周辺の環境

八ヶ岳連峰は長野・山梨県に広がる火山群で、その北端に位置する北八ヶ岳の標高2115mにある「白駒の池」は、溶岩流の窪地に水が溜まった天然湖。2,100mを超える高地にある湖としては日本最大の湖です。その周囲に広がる原生林は、日本の三大原生林の一つにも数えられます。この原生林は、国内で見られるコケの約4分の1種類が自生するほど豊かな苔の宝庫として知られ、北八ヶ岳全体でも500種類近い貴重な苔を見ることができ、日本蘚苔類学会から「日本の貴重なコケの森」として認定を受けています。

生態系の中で苔が果たす役割

普段人の目にも止まらない小さなコケですが、自然界ではとても大きな役割を担っています。苔類の大きな特徴の一つは、根ではなく体の表面から水や栄養を吸収することです。そのため、苔は土壌が発達していないような荒れた土地や壁面などでも生育することができます。
不毛な大地にどんな生き物にも先んじて入り込み、自然環境の土台を作り上げます。スポンジのように水をたっぷり含むコケが土壌の代わりとなり、草花や樹木が育つ助けになるのです。