宇宙の窓

太陽の今

太陽観測衛星SDOが捉えた太陽の今

もしも太陽が今よりほんの少し遠くにあったら、地球の環境は今とは全く違っていたでしょう。
今の火星と同じように海は存在せず、地表は砂漠と氷に覆われ、生命は誕生していなかったかもしれません。
太陽はただ熱や光を地球に届けるだけでなく、水や大気を循環させ、
私たち生命のエネルギーの源泉となっています。

この展示では、太陽観測衛星『SDO』が捉えた太陽の高精細画像をもとに、
最新のAIと画像処理技術を用いて超高画質で映像化。太陽の今を捉えたリアルタイム映像が、刻一刻と姿を変え、
時に美しく、時に荒々しく躍動する太陽の本当の姿を垣間見せてくれます。

展示内容

太陽観測衛星は、太陽で起きている現象をさまざまな異なる側面から捉えるために、異なる波長を使って撮影しています。波長の違いは温度の違いに対応していて、波長が長いほど(数字が大きいほど)温度が低く、波長が短いほど温度が高い領域が観測できます。映像では、主に2つの波長の画像が使われていて、それぞれの波長が温度の違いに対応し見えるものが少しづつ違っています。ここで波長の単位として使われている「Å(オングストローム)」は100億分の1mに相当します。

波長304Åでみる太陽

波長304Åは、約5万度の領域に対応していて、黒点が見える太陽表面よりさらに上空の彩層が見えています。磁力線にそったガスの塊であるプロミネンスの動き、爆発現象である太陽フレアなどダイナミックな現象を観測することができます。

波長171Åでみる太陽

波長171Åは、さらに高温の約60万度の領域に対応しています。この領域では太陽内部の強い磁場の影響を受けた、高温のプラズマの流れを見ることができます。また、太陽の最も外側のコロナと呼ばれる領域も観測できるようになります。

バックストーリー

太陽観測衛星「SDO」

NASAが2010年に打ち上げた『SDO (Solar Dynamics Observatory) 』は、太陽の活動をさまざまな波長でリアルタイムかつ超高解像度で捉え、地球の大気や磁場にどのような影響を及ぼしているかを研究することを目的とした衛星です。衛星から見える範囲の太陽全体を常時観測していて、4Kの画像を12秒間隔で撮影することができます。1日に衛星から送信されるデータの量は1.5テラバイトにも達し、専用の受信施設が建設されました。この展示ではSDOからの画像を元に、最新のAIと画像処理技術を用いてさらに高精細化した上で画像間をシームレスに繋ぎ、映像にしたものを使用しています。

太陽と地球の関係

2024年に日本の各地でオーロラが見えたというニュースを覚えている人も多いかもしれません。実は、オーロラは太陽から放出される物質が地球の磁場や大気と相互作用することで起きています。また、太陽大気中の激しい爆発である太陽フレアが起こり、強いX線が地球に届いたり、電気を帯びた粒子が通信障害や停電を引き起こすこともあります。太陽は地球に熱や光を届けるだけでなく、その活動が私たちの日常生活にも密接な関わりを持っています。

2025年は太陽活動のピーク

太陽は11年周期で活動期と小康期を繰り返していて、2025年はちょうどそのピークにあたります。日本をはじめ、普段見られないような地域でもオーロラの観測が相次いでいます。太陽表面での活動も活発化していて、映像の中でもその様子を観測できるかもしれません。また、強い太陽フレアも観測されていて、地球への影響が懸念されています。
こうした事態をいち早く観測し、必要な対策を取るために、複数の人工衛星と世界的なネットワークによる宇宙環境の観測・予測システムが構築されています。こうした観測・予報システムは宇宙天気予報と呼ばれ、通信・電力などの分野や宇宙開発などの分野で実際に活用されています。

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